■黒潮と魚の関係
事の起こりは地球の自転です。風が起こり、偏西風、貿易風により、赤道付近の暖水が暖流となって、北太平洋を時計回りに循環します。
水温が18度から30度にまで達する暖流の側沿水域(日本の沿岸に停滞する海水と黒潮本流との潮目)には、流水藻やゴミなどの浮遊物の中に、さまざまな魚たちの生態系が存在します。そして 大自然の営みをうまく利用し工夫された釣りがトローリングなのです。
この暖流が日本付近を通るとき、黒潮と呼ばれ、多くの卜ローリングの対象魚を連れてきます。
卜ロ- リングは理論とテクニック、情報の三要素を蓄積することにより、必ず釣れる釣りになります。
理論とは、ズバリ、黒潮のメカニズムです。12月から2月にかけて、17度から18度と黒潮の水温がもっとも低くなるころ。12月はヨコワ(マグロの幼魚、メジとも呼ぶ)を卜ロ-リングで釣りますが、1月から2月は、黒潮の本流側沿海域で、10Kgから30Kgく? らいのビンチョウマグロ(トンボシビ)や、大きなカツオ(タネガツオ)、キハダマグロなどが釣れます。
3月~5月は本格的なカツオのシーズンです。
「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の句に代表されるように、青葉のころ、必ずカツオたちはやって来ます。その適水温は18度から21度くらいです。またカツオを追ってマカジキ、クロカワカジキもときどきやって来ます。
21度の水温を超えてしまうと、土佐の一本釣りでおなじみのカツオ船が散水しながらイワシの生き工サをまき、毛バリのような? ルアーで一本釣りをします。こうなるとトローリングで使うルアーには反応が悪くなるため、トローリングでカツオは釣れにくくなります。
この後は、梅雨シイラといって、大きな子持ちのシイラが多くなり、23度を超えると本格的なカジキのシーズンです。
6月から8月は、最高水温が30度に達することもあり、26度を超えるくらいからカマスサワラが出てき ます。
9月になると水温もどんどん下がってきます。25度くらいを限度として、カジキも姿が見えなくなります。その後、もどリガツオのシーズンになり、カツオの適水温からもっと下がって最低水温の18度あたりがヨコワ(メジ)のシーズンで、また12月となります。このように魚たちは周年、決まった適水温にやって来ます。このデータが理論の1つです。
■トローリングは情報戦
ヒットした魚とのやりとりにもテクニックが必要ですが、トローリングを含めて、オフショアフィッシングにおいてはボートという最大の武器があります。
磯釣りや波止場での釣りとはちがい、魚が来るのを待ったりとか、潮を待ったりということがありません。魚のいるところへ攻めていけるわけです。
したがって魚のいる場所を把握すること、これが最大のテクニックです。前述の適水温ももちろん含まれますが、まずはあなたの釣り場? の海域を知ることから始めなければなりません。
黒潮の分支流や暖水波及(黒潮の影響により、黒潮のようなブルーの水色と水温になった海域)はあるのか。川や沖の瀬や、大陸棚の位置、潮目が生まれる位置などなど。
また漁業組合などの市場で、今どんな魚が水揚げされているのか見学しておくことも、周辺のポイントにいる魚を知るという意味でとても重要です。
こうした情報をしっかり把握していれば、かりにあなたのボートの航行範囲が、陸岸から3海里や5海里であったとしても、場所と時期によってはカジキとファイトできる可能性だって十分にあります。
もちろん、黒潮の影響をあまり受けない海においてもサワラやワラサ(ブリ)、サバ、タチウオ、スズキなど、対象魚が違うだけでトローリングは大いに楽しめます。
一番大切なのは、その対象魚が今どこにいるのかという情報です。漁師さんたちは、どの海域で水温が何度でどんな魚が釣れたのか、常にお互いに連絡を取り合い情報を交換しています。
私たちプレジャーボートの情報源もやはり仲間です。それがマリーナであったり、ボートショップやフィッシングショップだったり、日頃からそういった仲間づくりも大切なことなのです。
■簡単で奥が深いトローリング
トローリングはむずかしいとか、お金がかかると思われがちですが、そんなことはありません。ロッドやリールのはかにも、ボートに高価な艤装をたくさんしている方も中にはいますが、極端な話、3ミリほどのロープが50mと20号のテグス(ナイロンライン)が10m、あとはルアーがあればトローリングをすることができます。
トローリンクのタックルはいろいろありますが、まず魚を釣ってみないと、高価なタックルを揃える熱意も湧いてこないのではないでしょうか。
トローリングは簡単に始められる反面、実に奥が深い釣法でもあります。皆さんがこれからトローリングを始めるにあたって、より確実に、より楽しく、より安全に卜ロ-リングを楽しむために、タックル、操船、ポイント、ルアーの選択、流し方、魚がヒットしてからのやりとりなど、最初の一匹を釣り上げるまでに必要なことを、これから皆さんとともに考えていきたいと思います。